プリンターメーカー純正紙なら、プリンタープロファイルはプリンターメーカーから提供されている場合が多いです。また、ある程度高級なインクジェットプリンター用紙なら、用紙メーカーからプリンタープロファイルが提供されている場合が多いです。
それにも関わらず業務でインクジェットプリンター出力を行う場合は使用するプリンター専用にプロファイルを作る必要が出てきます。
プリンタープロファイルを自ら作成する理由をご紹介します。
メーカーが提供するプリンタープロファイルは、理屈で言えばある1台のプリンターの出力特性を示したもの
プリンターメーカーにせよ、用紙メーカーにせよ、プリンタープロファイルを作る場合は何らかのプリンターでテストチャートを出力して出力結果を測定してICCプロファイル等を作ることになります。
完成したプリンタープロファイルはテストチャートを出力したプリンターの出力特性を正確に記録しています。
例えばプリンターメーカーや用紙メーカーがEPSON SC-PX5VIIでテストチャートを出力してプリンタープロファイルを作成したとして、メーカーにあるSC-PX5VIIも、Aさんの家にあるSC-PX5VIIも、Bさんの事務所にあるSC-PX5VIIも同じメーカーの同じ製品なので、全く同じ出力設定でプリンター出力を行えば出力結果はほぼ同じでしょう。
よって、プリンターメーカーや用紙メーカーが提供するプリンタープロファイルを使えばある程度問題なく出力が行えます。
実際は、プリンターごとに多少出力特性に差がある
同じメーカーの同じ製品なら出力特性はほぼ同じですが、多少は差があります。
また、同じプリンターでも長く使っていれば出力特性は多少は変化してきます。
派手な色の緑や紫色などをプリンター出力する分には、多少出力特性に差があっても色の違いは分からない場合も多いです。
一方、例えば人の顔色などの場合は、ほんの僅かでも色に差があると目で見て差が分かってしまいます。黄色人種の人の写真であれば、ごく僅かに赤みが強いだけで赤っぽい顔に見えたり、ごく僅かに赤みが少ないだけで黄色っぽい顔に見えたり青白い顔に見えたりします。
プリンタープロファイルを自ら作成する必要がある場合と、ない場合
依頼を受けて業務としてプリンター出力を行う場合、プリンタープロファイルを専用に作る必要がある
依頼を受けて業務としてプリンター出力を行う場合、精度の高いカラーマネジメントが必要なのでプリンタープロファイルも使用するプリンター専用に作る必要が出てきます。
一般的にデジタルの写真やグラフィックを扱う場合、キャリブレーションされたモニターでデータの色を正確に表示し、必要な調整や処理を行ってデータの色を完成させます。そしてデータをプリンター出力する場合も、カラーマネジメントを行なってあくまでデータの色に忠実に出力します。
ICCプロファイルを使用したカラーマネジメントシステムを利用することでデータ自体が明確に色を示しているので、いずれの作業もデータの色を頼りに進めます。
例えば人物の写真の場合、写真の作成元では定期的にモニターキャリブレーションを行なっているモニターでデータの色を正確に表示して、絶妙な顔色になるように色補正等を行なってデータを完成させます。
このデータの出力依頼を受けてプリンター出力する際も、使用するプリンター専用に作成したプリンタープロファイルで精度の高いカラーマネジメントを行ない、絶妙な顔色に調整されたデータに忠実に出力します。
このとき、プリンターメーカーや用紙メーカーから提供されているプリンタープロファイルを使用すると、絶妙な顔色に調整されているデータが多少赤っぽい顔色で出力されたり青白い顔色で出力されたりしてしまう可能性が出てきます。
以上のような理由で、依頼を受けてプリンター出力を行う場合は使用するプリンター専用のプリンタープロファイルを作成する必要があります。
自分の作品を自らプリンター出力する場合、メーカー提供のプロファイルで問題ないことも多い
写真などの自分の作品を自分でプリンター出力する場合は、許容できるカラーマネジメントの精度は自分の判断によります。
プリンターメーカーや用紙メーカーが提供するプリンタープロファイルを使用すると、誤差は大きいとしても一応正常にカラーマネジメントはできます。
そこで、プリンタープロファイルを自作するのは大変なのでメーカーから提供されているプリンタープロファイルを使用し、キャリブレーションされたモニターを見ながら写真などの作品を仕上げ、プリンター出力してみて、出力結果が満足いけば完成とする、というケースは多いでしょう。
プリンタードライバーで色補正するならプリンタープロファイルのことは考えなくて済む
ICCプロファイルを使用したカラーマネジメントの仕組みを自分で運用するのではなく、撮影した写真をプリンターメーカー付属ソフトで開いて、プリンタードライバーで自動色補正をかけて印刷する、というケースも多いでしょう。
この場合はそもそも通常のカラーマッチングを行うわけではなく、プリンタードライバーやプリンターが見栄えの良い写真になるよう調整して印刷してくれることになるので、プリンターのユーザーがプリンタープロファイルのことを考える必要はありません。
必要なのは用紙種類などを正確に設定することです。
印刷会社が色校正を出力するなら高精度のカラーマネジメントが必要
印刷会社が色校正を出力する場合に、精度が高いカラーマネジメントが可能でコストも安いので大判インクジェットプリンターを使用するケースが多いです。
この場合、作品の出力の依頼を受けてプリンター出力するケースとは異なりますが、印刷の色校正はかなり正確に印刷結果を再現できていなければならないので、定期的にプリンタープロファイルに相当するデータ類を作成し直しています。
また、印刷会社が使用している色校正出力専用のソフトウェアには、一般的なICCプロファイルによるカラーマネジメントだけでなくより正確に印刷結果を再現するための仕組みが含まれています。
例えばプロセス4色の印刷でY版のみの場所はインクが1色だけなので濁りはありませんが、一般的なICCプロファイルを使用したカラーマネジメントを行うと濁りが入ってしまいます。そこで色校正出力専用のソフトウェアでY1色の場所には濁りが入らないように調整したりできます。
以上、プリンタープロファイルを自ら作成する理由などをご紹介しました。