適切なプリンタープロファイルを使い、プリンターの印刷設定なども自分で細かく設定できれば、厚めの高級ファインアート紙などへ正常にプリンター出力できます。
プリンタープロファイルを自作できない場合でも、用紙を購入して用紙メーカーが提供するプリンタープロファイルを使用すると、ある程度の精度のカラーマネジメントを行なってプリンター出力ができます。
プリンタープロファイルを自作できればさらに高い精度でカラーマネジメントを行なってプリンター出力ができます。
以下ではイルフォードのゴールドファイバーグロスにエプソンのプリンターで出力する場合を例として、出力手順の一例をあげてみます。
※用紙ブランドのサイトのプロファイルダウンロードページなどの情報は2021年に確認した時点の内容です。
ダウンロードしたプロファイルを使う場合は多少大雑把な出力の仕方にはなる
高い精度でカラーマネジメントを行なってプリンター出力を行うためには、プリンタードライバーの用紙設定をはじめとする各種の印刷設定を適切に作り、決定して、その条件でプリンタープロファイルを作成し、本番の出力も同じ条件で行います。
一方、用紙ブランドのサイトからダウンロードしたプロファイルを使う場合、そのプロファイルを使って出力してみて、何か支障があれば印刷設定をどこか変えたりする必要が出ます。そうなるとプリンタープロファイルを作成したときの印刷条件と本番の出力の条件が多少異なることになり、完璧に正しいとは言えない出力の仕方になります。
そのような事情もあるので業務としてプリンター出力を行う場合はプリンタープロファイルも自ら作る必要が出てきますが、自分自身の作品などを自らプリンター出力するというような用途であれば多少の誤差が出ても支障はないでしょう。
用紙ブランド提供のプリンタープロファイルを使用する場合
プリンタープロファイルの準備
プリンタープロファイルを自作できない場合は用紙ブランドが提供しているプリンタープロファイルを利用して出力してみます。
イルフォードのサイトの「サポート情報」のページへ進み、「ICCプロファイル」の「1.プリンターの型番を確認」へ進み、使用しているプリンターが海外でどのような機種名で販売されているか確認します。
「2.ダウンロード」へ進み、リンクからイギリスのイルフォードのサイトと思われるサイトへ移動し、用紙のシリーズ名で「GALERIE」を選び、プリンターのメーカー名と機種名を選び、表示されるプロファイル一覧から「Gold Fibre Gloss」に対応するICCプロファイルをダウンロードします。
ダウンロードしたICCプロファイルを自分のパソコンのカラープロファイル保存用のフォルダにコピーしておきます。
参考リンク
使用するプリンター用のプロファイルがない場合
古いものも含めればプリンターの機種はとても多いため、自分が使用するプリンター用のプリンタープロファイルが用紙ブランドから提供されていない場合もあります。
プリンターメーカーや用紙ブランドからプリンタープロファイルが提供されておらず、なおかつ自らプリンタープロファイルを作成することができない場合は、ICCプロファイルを使用した一般的なカラーマネジメントシステムを利用した出力は困難です。
その場合は正確なカラーマネジメントは行えませんがプリンタードライバーの色補正を利用した出力などをすることになります。
プリンターの用紙設定、印刷設定の準備
イルフォードのサイトの「サポート情報」のページの「プリンターの印刷設定一覧」へ進み、「ICCプロファイルを使用する場合」へ進みます。
先ほどダウンロードしたICCプロファイルのファイル名から用紙設定を判断する方法が説明されているので、自分のプリンターで先ほどダウンロードしたICCプロファイルを使ってプリンター出力する際に選択するべき用紙設定を判断します。
例えばダウンロードしたICCプロファイルが「ILFORD_EPP700_GPGFG_Baryta.icc」というファイル名なら、「Baryta」の部分が用紙設定を示していると説明されています。「ICCプロファイルを使用する場合」のページを見ても「Baryta」がエプソンのプリンターのいずれの用紙設定を示しているのか明確な説明は見つかりませんでした。しかし最近のエプソンのプリンターには「バライタ」という用紙設定が入っているので、おそらく「バライタ」を使うということだと思われます。
ダウンロードしたプロファイルと印刷設定の関係
例えばイルフォードのサイトからダウンロードしたICCプロファイルのファイル名が「ILFORD_EPP700_GPSC_USFAP.icc」となっていれば、「USFAP」の部分が用紙設定を示しており「Ultra Smooth Fine Art Paper」と判断できますが、イルフォードの人がそのプリンタープロファイルを作るためにテストチャートを出力したときにおそらく「Ultra Smooth Fine Art Paper」の用紙設定を使って出力しています。
プリンタープロファイル作成用のテストチャートの出力時の設定と本番のプリンター出力時の設定は全く同じにすることで精度の高いカラーマネジメントができます。
本番の出力
ノズルのチェック
プリンターの説明書に従ってノズルのチェックを行います。
ノズルの詰まりがあればヘッドのクリーニングをします。
用紙の準備
「ゴールドファイバーグロス」を用意します。
用紙にホコリが付いていれば空気で飛ばしたりブラシで除去したりします。ブラシを使う場合はブラシ自体にホコリがついていないか確認した方が良いでしょう。
用紙がプリントヘッドの方に反り返ってヘッドに接触してしまわないように、ヘッドと反対側に手で湾曲させるなどして少しくせを付けます。
用紙のセット
プリンターに用紙をセットします。
プリンターによって異なりますが、薄い用紙なら背面給紙をし、厚い紙になってくると前面から給紙するなどして用紙が平らなまま印刷するようになっていたりします。
「ゴールドファイバーグロス」は厚さ0.43mmで厚めの用紙です。0.43mmの用紙はどの給紙方法を選ぶべきか、プリンターの説明書で確認します。
プリンター本体で用紙種類を設定するようになっていれば適切に設定します。
先ほど確認した通り、イルフォードのサイトの「サポート情報」のページの「ICCプロファイルを使用する場合」の説明に従って用紙種類を選択します。
アプリケーションソフトから出力
アプリケーションソフトで写真やグラフィックのデータを開き、印刷画面で、アプリケーションソフト側で色管理を行う、という内容の設定にします。
プリンタードライバーの設定画面へ進み、色補正を行わない設定にします。
印刷画面のプリンタープロファイル設定欄で、イルフォードのサイトからダウンロードした「ゴールドファイバーグロス」用のプリンタープロファイルを選択します。
用紙種類などの設定を、先ほど確認した通りイルフォードのサイトの「サポート情報」のページの「ICCプロファイルを使用する場合」の説明に従って設定します。
出力を実行します。
ヘッドが用紙に接触した場合
ヘッドが用紙に接触するなどの支障が出た場合は、プリンタードライバーの設定画面などでプラテンギャップの調整などを可能な範囲で行い、再度出力してみます。
プリンタープロファイルを自作する場合
プリンターの用紙設定、印刷設定の準備
イルフォードのサイトの「サポート情報」のページの「プリンターの印刷設定一覧」の「プリンタードライバーを使う場合」へ進み、自分のプリンターで「ゴールドファイバーグロス」を使用するときの推奨印刷設定を確認します。
例えばエプソンのプリンターで「ゴールドファイバーグロス」を使用する場合の推奨設定は、用紙の種類は「写真用紙<光沢>」、印刷品質は「高精細」もしくは「超高精細」となっています。
自分のプリンターで、今確認した推奨設定を土台にして「ゴールドファイバーグロス」専用の用紙設定・印刷設定を作ります。その方法はプリンターによって異なります。
エプソンのプリンターなら「Epson Media Installer」を使って用紙設定を作成できる機種があります。プリンタードライバーやプリンター本体の調整欄で調整するしかない機種もあるかもしれません。
エプソンのプリンターの「写真用紙<光沢>」用の印刷設定なら、おそらく用紙厚の設定は「写真用紙<光沢>」の厚さ0.27mmくらいに最適な設定になっており、「写真用紙<光沢>」の表面は凹凸がなく滑らかなのでプリントヘッドと用紙の距離は狭い設定になっているかもしれません。
一方「ゴールドファイバーグロス」は厚さが0.43mmで「写真用紙<光沢>」よりかなり厚く、表面はそれほど大きな凹凸はありませんが紙が反りやすく、単純に「写真用紙<光沢>」用の印刷設定で出力したときプリントヘッドが用紙に接触してしまうおそれがあります。
そこで、例えば「Epson Media Installer」で「写真用紙<光沢>」用の印刷設定を複製し、用紙の厚さの設定を0.43mmに変更し、プリントヘッドと用紙の距離を設定するプラテンギャップの欄を広めに設定します。
プラテンギャップは自分の経験で決めます。とりあえず設定して一度テスト出力してみて、もし出力時にヘッドが用紙に接触したなら、その時点のプラテンギャップの設定値よりさらに広くしてみる、といったことを繰り返しているうちに「ゴールドファイバーグロス」を自分のプリンターで使用する場合の最適なプラテンギャップの設定値が判断できてきます。
設定を終えて保存すると、プリンター本体などに新たな用紙設定が追加されます。
プリンタープロファイルの作成
ノズルのチェック
プリンターの説明書に従ってノズルのチェックを行います。
ノズルの詰まりがあればヘッドのクリーニングをします。
用紙の用意
「ゴールドファイバーグロス」を用意します。
用紙にホコリが付いていれば空気で飛ばしたりブラシで除去したりします。ブラシを使う場合はブラシ自体にホコリがついていないか確認した方が良いでしょう。
用紙がプリントヘッドの方に反り返ってヘッドに接触してしまわないように、ヘッドと反対側に手で湾曲させるなどして少しくせを付けます。
用紙のセット
プリンターに用紙をセットします。
プリンターによって異なりますが、薄い用紙なら背面給紙をし、厚い紙になってくると前面から給紙するなどして用紙が平らなまま印刷するようになっていたりします。
「ゴールドファイバーグロス」は厚さ0.43mmで厚めの用紙です。0.43mmの用紙はどの給紙方法を選ぶべきか、プリンターの説明書で確認します。
プリンター本体の用紙種類の選択欄で、先ほど自分で「ゴールドファイバーグロス」専用に作った用紙設定を選択します。
プリンタープロファイルの作成を進める
あとはプリンタープロファイル作成作業を進めます。
印刷設定の決め方
プロファイル作成用のテストチャートを出力する際、印刷解像度、双方向印刷か単方向印刷か、などをよく考えて決めます。
高い精度でカラーマネジメントを行うには、本番のプリンター出力はテストチャートの出力時と同じ設定で行う必要があります。そこで、例えば本番出力を印刷解像度1440×1440dpi/双方向印刷で行いたいならプリンタープロファイル作成用のテストチャート出力も印刷解像度1440×1440dpi/双方向印刷で、本番出力を印刷解像度5760×1440dpi/単方向印刷で行いたいならテストチャート出力も印刷解像度5760×1440dpi/単方向印刷で行います。
印刷解像度や双方向・単方向に限らず、その他の全ての印刷時の設定を、予定している本番出力の設定と同じ設定にしてテストチャートを出力します。
高い精度でカラーマネジメントを行うためには、同じ用紙に1440dpiで出力する場合もあれば5760dpiで出力することもあるという場合は1440dpi用のプリンタープロファイルと5760dpi用のプリンタープロファイルをそれぞれ作る必要があります。
プリンタープロファイルの名前
プリンタープロファイルの名前には、プリンターの機種名、用紙名、印刷解像度、双方向か単方向か、作成日、などを含めておくと管理上便利です。
参考記事
本番の出力
ノズルのチェック
プリンターの説明書に従ってノズルのチェックを行います。
ノズルの詰まりがあればヘッドのクリーニングをします。
用紙の準備
「ゴールドファイバーグロス」を用意します。
用紙にホコリが付いていれば空気で飛ばしたりブラシで除去したりします。ブラシを使う場合はブラシ自体にホコリがついていないか確認した方が良いでしょう。
用紙がプリントヘッドの方に反り返ってヘッドに接触してしまわないように、ヘッドと反対側に手で湾曲させるなどして少しくせを付けます。
用紙のセット
プリンタープロファイル作成用のテストチャートを出力したときと同じように用紙をセットします。
プリンター本体の用紙種類の選択欄で、プリンタープロファイル作成時に選んだものと同じ用紙種類を選択します。
アプリケーションソフトから出力
アプリケーションソフトで写真やグラフィックのデータを開き、印刷画面で、アプリケーションソフト側で色管理を行う、という内容の設定にします。
プリンタープロファイル選択欄で「ゴールドファイバーグロス」専用に作ったプリンタープロファイルを選択します。
プリンタードライバーの設定画面へ進み、色補正を行わない設定にします。
プリンタードライバーの設定画面の「用紙設定」などでプリンタープロファイル作成用のテストチャートを出力した時と同じ用紙設定を選びます。また、双方向印刷か単方向印刷かの選択欄やその他の設定を全てテストチャート出力時と同じ設定にします。
出力を実行します。
出力結果の確認
出力に使った写真やグラフィックのデータを正確にキャリブレーションされたモニターで表示し、ある程度演色性の高い照明の下でプリンター出力結果を見て、比較します。
その際、モニターと照明の白色点の色は同じにしておいた方がカラーマッチングがしやすいので、部屋の照明が昼白色ならモニターの色温度は5000K前後、部屋の照明が昼光色ならモニターの色温度は6500K前後にします。
プリンター出力物の明るさとモニターの明るさは同じくらいの明るさになるようにします。
モノクロ写真を出力する場合
モノクロ写真を出力する場合も、基本的にはカラー写真と同じように出力することで写真のデータの濃さを正確に出力できます。
出力結果の確認も、カラー写真を行う時と同じようにキャリブレーションされたモニターとある程度演色性の高い照明を使って確認すれば問題ありません。
プリンタードライバーの機能を使って出力するとどうなるか
プリンタードライバーにモノクロ写真の濃さや色合いをコントロールする機能が付いている場合がよくあります。
プリンタードライバーのモノクロ写真用の色補正機能を使ってプリンター出力した場合、写真のデータの濃さを正確に出力することは困難です。
例えばモノクロ写真を「ゴールドファイバーグロス」にプリンタードライバーの色管理を利用してプリンター出力をすると、実際のデータと異なる濃度で出力されたり、元データが無彩色でも無彩色とはかなり異なる色で出力されたりするかもしれません。
プリンター出力を正確に管理するためにはプリンター出力結果を測定した数値を使って補正する必要がありますが、プリンターメーカー純正紙ではない「ゴールドファイバーグロス」をプリンタードライバーの色管理で出力するとしたらそういった補正は行えないので、元データの濃さと異なる出力結果になるのは当然です。
プリンタードライバーの色調補正機能を使って濃度や色合いを調整して何度も出力すると、希望通りの出力結果に近づけることはできます。
この場合、事前に行なっている写真の現像、レタッチ作業で写真を仕上げても、その後プリンタードライバーでさらに変更を加えて出力することになるので、現像、レタッチを終えて保存してある写真は最終的な仕上がりという位置づけではなくなってきます。
また、例えば一年後に全く同じ条件で出力することは困難です。一年後も全く同じ条件で出力するためにはプリンタードライバーの機能でかけた補正内容をプリンタードライバーの設定のプリセットとして保存するなどして管理する必要があります。
以上のようなことから、自分一人で写真を撮影して自分一人でプリンター出力を行なって自分の作品を完成させる、というようなケースでは、プリンタードライバーの色補正機能を使うこともできるでしょう。
一方、他の人から依頼を受けてプリンター出力をしたり、複数の人で作業していたり、半年後や一年後などいつでも同じ条件の出力を行えるようにしておく必要がある場合は、プリンタードライバーの色補正機能を使った出力ではうまくいきません。